2024年ノーベル文学賞受賞作品。
別に普段からノーベル文学賞を追いかけているわけではないけど、友人におすすめされてどハマり。
基本情報
タイトル(邦題):すべての、白いものたちの
著者:ハン・ガン
訳者:斎藤真理子
発売日:2023年5月
発行所:株式会社河出書房新社
いろんな版について
こちら、元々の作品は2016年に発行されたそう。
その2年後、2018年に改訂版が刊行され、「作家の言葉」(あとがき)が追加。
日本版は改訂版を元に、差し込まれている写真なども選定し直されたバージョンらしい。
ちょっと他のバージョンの写真とか、全体的な雰囲気の違いを見てみたい。
好きなポイント
読み始めてすぐに、ゆっくり、ゆっくり噛み締めて読まなくては、と思った。
この短い、繊細で美しい言葉たちに初めて触れる
その時の自分の反応をしっかり味わわなくてはもったいない。
まだ読み終わりたくない。
初めてそう思った本。
文章の美しさ
最初は、散文詩とかフォトエッセイの類かなぁ、と単純に考えて読んでいた。
ただ、なんだか少し抽象的で、その表現の中に「何か」がある、ように思える。
けどはっきりとはわからないから、立ち止まって、ゆっくり何度も読み直して
その「何か」を読み取ろうとする。
普段だったら面倒くさくなって、キリのいいところで物語の先を追ったり、
著者の主張を確認する作業に移ったりするのだけど
あまりにも文章が美しくて、何度読んでも気持ちが良いから、ちっとも先に進めない。
元々活字が好きで、小説、ビジネス書、学術書、なんでもサクサク読み進める方なのに
これは読み終わるまでにものすごく時間がかかった。
タイトル通り短く語られる色々な「白いもの」の中には、素敵なもの以外にも
死や厳しさ、悲しみにまつわるものもたくさんある。
生まれてすぐに死んでしまう我が子への「しなないで、おねがい」という母親の願いや
誰かの人生への絶望のようなものを書いているところとかは、ぎゅうっと心臓が反応する。
ただ、それを変に修飾したりせずに淡々と優しく叙述しているものだから、
こちらも変に咀嚼する必要がなくて、最後には、ああそうか、と飲み込むことになる。
それがどうしてか心地良い。
韓国語の原文でどういう表現なのか、日本語訳するときはとても慎重な作業だったろうな、とか
ものすごく気になってくる。
2周目待ったなし
本編を最後まで読み切って、まだ余韻に浸りたい気持ちであとがきや解説などを読むと
この本の仕掛けについて知ることができる。
詩集兼エッセイだと思ってたのが、実は小説としての構造を持っていて
生まれて2時間で死んでしまった姉と自分との間の人生のやり取りが表現されている、
章ごとに誰が生きているのかが違う、と解説されている。
全く気づかないで、ただ綺麗な文章を摂取して満足していた私は
「なぬ!?」と、それを確かめるためにもう一度最初から読み始めることになった。
そう思ってもう一度読むと、単純なもので、ふんわりとしたストーリーが読み取れて本当に驚く。
そりゃノーベル文学賞もとりますよね。
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